瑕疵担保責任と判例-地盤沈下(2)



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判例で学ぶ!瑕疵担保責任

不等沈下 (事例2)

土地の不等沈下による建物の外壁亀裂、ドアの開閉不能等について、売主の暇痕担保責任を認め、
仲介業者の説明告知義務違反による責任を認めた事例(東京地判平成13.6.27 判時1779-44)

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事案の概要

 業者が売主である造成地上の新築建物及び土地の売買において、建物が傾斜し、基礎の亀裂、土間床の亀裂、外壁の亀裂、ドアの開閉不能、外壁に固定したガスメーター、配管等が歪んで変形するなどしたため、紛争になった。買主は建物の傾斜等は、軟弱地盤で不等沈下が発生したため生じたとして、売主の蝦庇担保責任及び仲介業者の債務不履行・不法行為責任を主張した。
 裁判所は、売主の暇痕担保責任を認めたほか、仲介業者の不法行為責任を含め、買主の請求を認容した。

売主の暇庇担保責任についての判断骨子

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(1)暇庇かどうか
※本件土地においては、現に地盤沈下が発生し、本件建物には多数の不具合が発生しているが、本件建物に不具合が発生したのは、本件土地が軟弱地盤であり、そのため地盤沈下が発生したことが原因である。
※軟弱地盤であることは本件土地の瑕疵である。


(2)「隠れた」暇庇かどうか
※本件土地が軟弱地盤であるという瑕疵は、本件売買契約の前から存在したものであり、専門家の調査や異常の発生により初めて明らかになる性質のものであるから、売買契約時に存在した通常容易に発見し得ない「隠れた瑕疵」ということができる。

(3)暇庇の程度
※本件においては、何よりも生活の本拠である家を購入したのにもかかわらず、住居に著しい困難をもたらす多数の不具合が発生しており、それが土地の性状に起因する地盤沈下によるものであって、さらに、本件建物の修理に要する金額は多額で、建物新築に匹敵するほどのものであること等を考慮すれば、結局、原告は本件売買契約の目的を達成することができない。
※したがって、買主の売主に対する鞍庇担保責任を理由とする売買契約の解除は有効である。

売主の暇庇担保責任についての判断骨子


(1)注意義務の程度・範囲
※不動産の仲介業務を委託された者は、委託の本旨に従って善良な管理者の注意義務をもって誠実に仲介事務を処理すべきであり、信義則上、不動産売買契約における買主に対しては、買主が当該物件を購入するかどうかの意思決定を行うに際して重要な意義を有する情報について説明告知する義務を負っており、これに違反して買主に損害を与えた場合には、説明告知義務違反としてこれを賠償する責任がある。

※不動産仲介業者は、消費者の立場にある買主が物件購入の意思決定をするに当たって過不足ない情報を提供すべきであるから、説明告知する義務を負う事項は宅地建物取引業法第35条に規定されている事項には限られないことはいうまでもない。

(2)本件事案への当てはめ
※本件事案における仲介業者は、本件売買契約に先立って、売主から本件各土地に関する地盤調査報告書を受取り、その内容について説明を受けており、売買契約当日にも売主からの買主に対する説明を聞いて本件土地が軟弱地盤であることが説明されていないことを認識していた。
※一般に、土地建物を購入する者にとって、買い受ける土地の性状がいかなるものであるのかという点は重大な関心事であり、その意味で本件各土地が軟弱地盤であるかどうかは当該土地を購入するかどうかの意思決定において大きな要素となる。
※実際に買主は土地の性状について質問をしており、本件土地が軟弱地盤であることは、買主らが本件不動産を購入するかどうかを決定するに際して決定的に重要な要素であったというべきである。
※仲介業者は、本件各土地が軟弱地盤であるとの事実が、買主が当該物件を購入するかどうかの意思決定に際して決定的に重要な要素となるのであるから、この点について買主らに十分に説明告知する義務を負っていたというべきところ、これを怠り、本件において買主らに対して、本件各土地が軟弱地盤であるという事実を説明しなかった。
※したがって、仲介業者は、説明告知義務違反を理由とする不法行為責任に基づく損害賠償の責任を負うべきものといわなければならない。
軟弱地盤であることを認識していた仲介業者には損害賠償責任があるとされ、軟弱地盤であることを認識していなかった仲介業者の責任は否定された事例
(前記控訴審 東京高判平成13.12.26 判タ1115-185)

仲介業者の責任についての判断骨子


(1)軟弱地盤であることを認識していた仲介業者
※土地が軟弱地盤であるかどうかは、買主がこれを購入するかどうかの意思決定において重要な要素となるものであり、買主らは、仲介業者Yl(売主側)担当者らに対して本件各土地の地盤の状態等について質問していたのであるから、この点に重大な関心を有していたことは明らかである。そうすると、本件各土地が軟弱地盤であることを認識していたYlの担当者は、買主であるⅩらに対し、本件各土地が軟弱地盤であることについて、十分な説明・告知をする義務を負っていたというべきである。
※Ylにおいて、本件各土地が軟弱地盤であることを認識していたというためには、報告書に記載されたような地質についての詳細な分布までを正確に認識していなければならないと解すべきものではなく、水分が多くて軟弱であり、沈下を起こしやすい地盤というほどの意味を認識していれば足りると解すべきである。
※Yl担当者には、本件各土地が上記の意味での軟弱地盤であることの認識は十分にあったものと認められ、地質に関する専門的知識がないからといって、上記の意味での軟弱地盤であることについて説明、告知義務を免れるものではない。

(2)軟弱地盤であることを認識していない仲介業者
※仲介業者Y2(買主側)の担当者については、売買契約の締結の前日Yl担当者から送信されたファックスに、軟弱地盤に関する記載はなく、また、地盤調査報告書のような情報の提供を受けたことも認められない。売買契約の締結の日に読み上げられた重安事項説明書やYl担当者らの説明の内容からは、Y2担当者において、土地自体が軟弱地盤であることについて、明確に認識できたか否かは疑問であり、本件全証拠によっても、土地自体が軟弱地盤であることを認識することができたものと認めることはできない。そうすると、Y2には、説明告知義務違反はないというべきである。


判例のポイント

●本件は、【事例1】と同様に、不等沈下による建物の不具合を暇癌とするものであるが、売主の程痕担保責任が認められただけではなく、【事例1】と異なり、伸介業者の責任も認められた点に注目すべき事案である。
●【事例1】と【事例2】との決定的な相違点は、【事例1】では、仲介業者は、不等沈下について知っていないことはもとより、建物の傾斜に気付いていなかったのに対し、【事例2】では、伸介業者Ylは、本件土地が軟弱地盤であり、本件土地が不等沈下することを知っていたということである。
●本件では、不動産の伸介業務を委託された者は、委託の本旨に従って善良な管理者の注意義務をもって誠実に仲介事務を処理すべきであり、信義則上、不動産売買契約における買主に対しては、買主が当該物件を購入するかどうかの意思決定を行うに際して重要な意義を有する情報について説明告知義務があることを裁判所が明確にしている。重要な情報を有している仲介業者は、当該情報を説明告知しなければ、善管注意義務違反が問われることになる。