瑕疵担保責任と判例-地盤沈下(1)



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判例で学ぶ!瑕疵担保責任

不等沈下 (事例1)

土地の不等沈下による建物の傾斜等について、売主の暇痕担保責任は認め、仲介業者の責任は否定した事例
(松戸支判平成6.8.25 判時案の概要

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 売主が6年以上居住していた建物及びその土地の売買契約の事案で、買主が引渡しを受けた後に、当該建物に70分の1の勾配の傾斜があったことに気付いたため紛争になった。
 買主は、傾斜の原因は土地の不等沈下であるとして、売主に対しては瑕疵担保責任を、仲介業者に対しては、仲介契約における債務不履行をそれぞれ根拠として損害賠償請求を行った。
 売主の瑕疵担保責任につき、裁判所は、隠れた瑕疵があったと認定し、損害の範囲については修補費用も含まれるとし、損害額については、公平の見地から売買代金の価格を最高限度として原告の請求を認容した。
 仲介業者の債務不履行責任につき、裁判所は、仲介業者には善管注意義務違反の過失はなかったとして、仲介業者の責任を否定した。

売主の暇庇担保責任についての判断骨子

IMG_25692.jpg写真のキャプションを入力します。
(1)暇庇かどうか
※本件建物の傾斜は、いわゆる経年変化によるものではなく、敷地たる本件土地の不等沈下に起因するものであり、そのため、本件土地の北側から南側の道路に流れるように設置されている排水施設にも影響があり、1年に2、3回、大雨の時などに、汚水が逆流して溢れ出ることもある。

※売主側は「中古住宅は、現状有姿のまま購入するのであるから、たとえ多少の変更があったとしても、それが、許容限度を超えていない限り、瑕疵とはいえない」と主張するが、本件建物の傾斜は、築後の経年変化により通常生じるものとはいえないから、買受入が、傾斜があることを承知の上で買い受けたり、価格が傾斜の存在を前提に決定されたような事情があるような場合を除き、当然これを許容すべきであるとはいえない。
※したがって、本件不動産には、瑕疵がある。

(2)「隠れた」瑕疵かどうか
※売主の蝦庇担保責任を生じさせる「隠れた」瑕疵があるというためには、買受入が、買受当時右瑕疵の存在を知らず、かつ、それについて過失がなかったことを要する。
※買主は、売買契約の調印にあたり、本件建物の付帯設備及び状態を一応確認し、特に異常がないことを確認した旨記載された契約書に署名押印し、引越後1週間が経過した残代金支払時までに本件建物の傾斜には気付いておらず、他方、売主の代表取締役も仲介業者の従業員も、リフォーム工事をした従業員も誰も本件建物の傾斜には気付かなかった。したがって、買主が、入居前にこれに気付かなかったことについて過失があるとはいえない。
※また、買主が入居後残代金支払日までに本件建物に3日間宿泊していたにも関わらず傾斜に気付かなかったことは、3日間だけの宿泊であり、しかも落ち着いて家の状況を点検する余裕がなかったと認められるから、全く予期していない家の傾斜などに気付かなかったとしても、過失があるとはいえない。
※本件瑕疵は、「隠れた」蝦庇というべきであるから、売主が瑕疵担保責任を負うことは明らかである。

仲介業者の責任についての判断骨子


(1)注意義務程度・範囲
※不動産仲介業者の注意義務については、その業務の性質に照らし、取引当事者の同一性や代理権の有無、目的物件の権利関係、殊に法律上の規制や制限の有無等の調査については高度の注意義務を要求されるが、目的物件の物的状況に隠れた蝦痕があるか否かの調査についてまでは、高度な注意義務を負うものではない。

(2)本件事案への当てはめ
※当該仲介業者は、民法第644条に基づく善管注意義務を負うが、同社の社員は前居住者から本件建物の傾斜の事実を聞かされておらず、また、買主はもとより、売主の代表取締役等本件建物内に入った誰もが、本件蝦庇に気付いていないのであるから、仲介人として本件不動産を買主に紹介した仲介業者の担当者が本件瑕疵に気付かなかったことについて、善管注意義務を怠った過失があるとはいえない。
※本件における仲介業者は、何ら責任を負わない。


判例のポイント

● 本件は、売主の暇痕担保責任は認められたが、仲介業者の責任は認められなかった事例である。
● 瑕疵担保責任については、不具合の原因を巡って争いになることが多いが、本件でも、建物の傾斜の原因が経年劣化なのか、不等沈下なのかが争いとなり、裁判所は不等沈下を原因と認定し、「瑕疵」があるとの判断を行った。
● 売主は本件は中古住宅であり「現状有姿売買」であることを理由に建物の傾斜は瑕疵に当たらないという主張を行った。しかし、裁判所は、本件建物の傾斜の原因は経年劣化ではなく、買受入が傾斜があることを承知の上で買い受けたり、価格が傾斜の存在を前提に決定されたような事情があるような場合を除き、現状有姿売買であっても、不等沈下による建物の傾斜等は「暇痕」であると判断した。中古住宅売買においては、実務上参考となる判例といえる。
● 仲介業者の注意義務について、取引当事者の同一性や代理権の有無、目的物件の権利関係、殊に法律上の規制や制限の有無等の調査については高度の注意義務を要求されるが、目的物件の物的状況に隠れた暇痕があるか否かの調査についてまでは、高度な注意義務を負うものではないとの判断が示されている。