判例で学ぶ!瑕疵担保責任


建物の欠陥 (事例1)

土地と老朽化した建物の売買について、老朽化した欠陥は「瑕疵」であるものの・当該瑕疵は「隠れた」暇庇に該当しないとして、売主の暇庇担保責任を否定した事例
(札幌高判昭和53.8.15 判タ374-119)
事案の概要

かつて旅館として利用されていた建物と土地を買い受けた買主が、当該建物を利用して旅館営業を再開しようとしたところ、浴室・脱衣室の老朽化が激しくそのままでは使用できない状態であったため、紛争となった。 裁判所は、本件建物の浴室、脱衣所には瑕疵があると認定したものの、当該暇庇は、「隠れた」瑕疵ではないとして、売主の瑕疵担保責任を否定した。


売主の暇庇担保責任についての判断骨子

(1)瑕疵かどうか
※昭和51年4、5月頃、本件建物の浴室、脱衣室はその天井が落ちそうになる等破損、老朽が甚だしく、旅館営業を再開しようとしても、そのままでは使用不可能な状態であったことが認められる。
※このような事実に照らせば、本件売買契約が締結された昭和51年5月27日当時、本件建物の浴室、脱衣室には瑕疵があったものと解するのが相当である。

(2)「隠れた」瑕疵かどうか
※買主は、本件土地、建物を買受けた後で本件建物において旅館を営業する予定であったことが認められ、本件土地、建物を買受けようとする買主としては、本件建物を予め検分する程度の注意は払うべきであり、買主が右の注意を払って本件建物を検分すれば、直ちに前記浴室、脱衣室の状態を知ることができたものと認められる。
※したがって、本件建物の浴室、脱衣室の蝦庇は隠れていたものとは認められない。
※さらに、本件では、買主は本件建物を売買契約終結前に2回検分しており、浴室、脱衣室の状態等を知るに至っている。したがって買主は、本件売買契約が締結された当時、本件建物の浴室、脱衣室その他の箇所に瑕疵があることを知っていたものであり、仮に右瑕疵が隠れた瑕疵にあたるものとしても、それによって売主が買主に対していわゆる瑕疵担保責任としての損害賠償義務を負ういわれはない。


判例のポイント

●本件は、建物の老朽化を「暇痕」と認定したものの、当該暇痕については、買主が、取引上一般的に期待される程度の注意を払っていれば当然気付くべきところを気付かなかったとして、暇痕の存在に過失があることを理由として「隠れた」暇痕に該当しないと判断された事例である。瑕疵担保責任が瑕疵による損害の衡平な分担を目的とする制度である以上、当然の結論といえよう。