判例で学ぶ!瑕疵担保責任


暴力団(2)

同じマンションに平穏な生活を乱す迷惑行為を行う暴力団組員がいる中古マンションについて隠れたる
瑕疵があるとして損害賠償請求が認められた事例(東京地判平成9.7.7 1605-71他)
事案の概要

売主から中古マンションを買い受けた買主が当該マンションに入居したところ、当該マンションに暴力団が居住しており、祭礼の際にマンション前路上で飲食の上大騒ぎをしたり、本件マンション管理人室を物置として使用している等の迷惑行為を行っていることを知った。そこで買主は、売主に対し、瑕疵担保責任に基づく解除による原状回復としての売買代金の返還、損害賠償請求その他錯誤無効等の主張を行った。瑕疵担保責任の関係では、瑕疵の存否、解除の可否等が争点になり、裁判所は、隠れた瑕疵を認めたものの、解除は認めず、売主の損害賠償責任を認めた。




売主の暇庇担保責任についての判断骨子

(1)瑕疵かどうか
※民法第570条にいう瑕疵とは、客観的に目的物が通常有すべき設備を有しない等の物理的欠陥が存する場合のみならず、目的物の通常の用途に照らしその使用の際に心理的に十全な使用を妨げられるという欠陥、すなわち心理的欠陥も含む。
※建物は継続的に生活する場であるから、その居住環境として通常人にとって平穏な生活を乱すべき環境が売買契約時において当該目的物に一時的ではない属性として備わっている場合には、同条にいう瑕疵にあたる。
※本件マンションは、暴力団員が居住し始め、所属暴力団員を多数出入りさせ、さらに夏には深夜にわたり大騒ぎをし、管理費用を長期間にわたって滞納する等、通常人にとって明らかに住み心地の良さを欠く状態に至っているものと認められる。
※このような状態は、もはや一時的な状態とはいえないから、本件事情は本件不動産の瑕疵であると認められる。

(2)「隠れた」瑕疵かどうか
※買主は本件マンションの入り口付近の私物化等について、現地見聞の際に気付いたものと准認されるが、暴力団員であること及び夏祭りの集会等は、一般人に通常要求される調査では容易に発見することができず、一定期間居住してみて初めて分かることであるから、本件事情については、本件売買契約当時に原告において知り得なかったものと認められる。
※したがって本件事情は、本件不動産の隠れた瑕疵にあたる。

(3)暇庇の程度
※本件瑕疵は、居住の目的に用いられない程度の瑕疵であるということはできない。よって、契約解除は認められない。

判例のポイント

●判例は、暴力団の組員が存在することそのものを暇痕といっているのではなく、組員の具体的行動が住み心地の良さを欠く状態になっているため、瑕疵であるとの認定を行っている。